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【あらすじ・見どころ】『今際の国のアリス』 / 麻生羽呂

 くだらねー日常からの解放、現実逃避、中二病ピーターパン症候群

 呼び方なんかカンケーねぇ……

 どこでもいいからよ。どっか知らねー国にでも行きたいと思ったことはないかい?

 

〈あらすじ〉

 落ちこぼれの18歳、アリスこと有栖良平は将来に対する漠然とした不安を抱いたまま生活していた。友人のチョータとカルベも同じように将来の不安を抱いていた。

 世界が滅亡するような事件が起こって欲しい。そうすれば自分は変われる。アリスは心のどこかでそんなことを願っていた。

 「どっか知らねー国にでも行きてーよな」

 ありすがそうつぶやいた時、朝の四時にもかかわらず花火あがり眩い光に包まれる。気が付くと何年もそこにいたように埃まみれの状態でカルベの店にいた。外に出てみるも人が一人もいない。理想の世界だと喜ぶアリスとチョータ。

 夜になるとお祭りがやっているらしき神社を発見する。しかし、それが生死を争う「げぇむ」の始まりだった。

 

 

 

 

〈見どころ〉

 

見どころ① まさに突拍子もない

 突如ゲームに巻き込まれたアリス達。

 その「げぇむ」が難解かつ理不尽。逃げ場のないなかで足の先から頭の先までをフルで使って生にしがみつこうとする。

 抗うことはできない。唯一できることは「げぇむ」に参加することだけ。

 

 肝心の「げぇむ」の難易度がおかしいぐらいに高い。協力すれば全員で助かるが場合によっては参加者船員が殺される可能性のあるもの。逆に一人だけ確実に助かるが、残りの参加者は殺されるという、完全に主催者の裁量次第。

 努力すれば助かるとか、抜け道が存在するとか、よくあるサバイバル系の常識が全く存在しない。ここではルールが絶対の条件である。

 そんな恐怖のデスゲーム。解決策を考察しつつ読み進めるし、死に直面したアリス達の行動にも注目!

 

見どころ② 窮地からの距離感

 初日の「げぇむ」を見事乗り切るアリス達だが、着実に距離は開いていた。

 何とか生き延びるという決意と、生きている実感を全身で味わうアリス。

 このバカげた「げぇむ」の真相を探りつつ、自慢の力で乗り切ろうとするカルベ。

 一方、二人ほどの頭脳・パワー、そして精神力を持ち合わせていないチョータは距離感を感じていた。三人と同じ「げぇむ」を生き延びたシブキもチョータを同じ考えだった。極限状態でも協力するのか、それとも待ち受けるは決別か。仲間たちの人間模様にもぜひ注目してもらいたい。

 

見どころ③ 不思議な国

 「アリス」と「国」という二つの語が並ぶとまず思いつくのは、「鏡の国のアリス」だろう。そんなおとぎ話に似た、現実らしさがどこか欠如した現実という世界観が特徴的だ。

 「神様の言うとおり」や「GANTZ」にどこか似た雰囲気を感じる。

 「げぇむ」の内容も不気味でルール自体が破綻しているような世界。そこでクリアすると貰えるトランプのカード。それらが指し示す意味とは一体何なのだろうか?

 続きがすぐに読みたくなる魅せ方で毎回終わらせるのはずるいなと思う。

 

 

  デスゲーム系のマンガでも少し異質なものであるこの作品。その独特加減がクセになる人もいるのではないだろうか?

 ワクワクやスリルを求める人にはおススメの作品。表紙が最高にイカしているので、表紙だけでも見てもらいたい。

 

 

 

 

 

〈書籍〉 

 

麻生羽呂 『今際の国のアリス』 小学館