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【あらすじ・見どころ】『ヒマワリ』/ 平川哲弘

 

 そこに集まったのはバラバラの5人。ただ夢はみな同じ。

 トップアイドルになる。

 

〈あらすじ〉

 広島県北西部の田舎町に住む高校生、日向レンと胡キヨハル。二人は一緒に神楽を舞う、大親友であった。

 ある日キヨハルは高校をやめ失踪する。一か月後、レンがキヨハルを見つけたとき、彼はアイドルとしてテレビ出演していた。田舎町で満足していたレンに対し、ずっと遠くを夢見ていたキヨハル。別の世界で生きるキヨハルとまた一緒にいたいと思うレン。

 そこにキヨハルをスカウトした櫻田という男が現れる。レンをアイドルの卵としてスカウトしようとしたところ、早とちりしたレンはアイドルになれると思い上京する。

 

 そこで待っていたのはアイドルらしさがない体型のデブ、マンガを描き続けるオタク、喧嘩っ早いヤンキー、親の七光り。

 

 果たしてレンは一流のアイドルになれるのか!?

 青年たちは今、現実と闘う。非情でありながら、そこには溢れるばかりの夢が詰まる。「アイドル」という夢に向かって走る、5人の成長物語。

 

 

 

 

〈見どころ〉

 

 見どころ① それは「夢」

 近くても遠い存在。多くを魅了し、憧れとまで言わしめる存在。

 それが「アイドル」である。

 そんな「アイドル」はおとぎ話や理想に近い存在。一般人では到底届かない世界。そんな存在になるためには誰にも負けない努力が必要である。だからこそ、一流アイドルになるという「夢」と、自分にはできない・不可能だという「現実」の狭間で戦わなくてはならない。

 

 叶うほうが圧倒的に少ない「アイドル」という夢。がむしゃらにひたすらに夢に喰らいつき、上までどうにか登りつめるしかない。

 熱い夢を目指す熱さが物語が読んでいる側にもひしひしと伝わってくる。こういう青春もあるんだと、正直感心してしまった。

 スポーツや恋愛とは一味も二味も違った青春のかたちは珍しいということもあってか新鮮で面白い。

 

 もうひとつ、新鮮な要素がある。

 このマンガは『男性アイドルを男性視点で描いている』という点である。 

 男性アイドルが活躍するアニメやゲームは女性向けが主流な中で男性視点というのは珍しい。絵柄も女性に向けたものとは言い難い。

 正直どの層に向けたマンガかはわからないが、男性向けでも女性向けでもない。それがこのマンガのいいところかもしれない。

 

 見どころ② 癖の強い登場人物

 あらすじでも書いたが、なんでアイドルを目指しているのかわからないぐらいにはとびぬけた個性がある面々である。

 いつまでたっても痩せない男、マンガに逃げてばっかりの男、停学を何度もくらっている男、親の七光りから脱することのできない男。アイドルになれるのかとは思うが、個性が被っていない分、アイドルグループとしてはバランスがいい気もする。

 しかし、まとまりの悪さは頭抜けている。普段から練習はせず、五人そろって練習なんかやったこともない。そんな5人が果たしてアイドルになれるのか、見ものである。

 

 見どころ③ その表現力

 アイドルということで当然歌とダンスがつきもの。

 しかし、マンガでそれを表現しようとすると難しいものがある。

 歌はそのうまさを伝えることはできないし、ダンスのすべてを表現することができない。

 そのため別の視点で表現する必要がある。

 それが軽快ながら迫力ある画力である。

 そういうところにも注目して読み進めて欲しい。

 

 

 

 

〈書籍〉

 平川哲弘 『ヒマワリ』 秋田書店

 

ヒマワリ 1 (少年チャンピオン・コミックス)

ヒマワリ 1 (少年チャンピオン・コミックス)