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【あらすじ・見どころ】エリアの騎士

〈あらすじ〉

 U-15サッカー日本代表のエース、日本の救世主とも評される男・逢沢傑。そんな彼を兄に持つ男・逢沢駆はハートの強さが足りないというFWとして致命的な欠陥を持っていたため、自らマネージャーを志願し、サッカーをやめることを考えていた。

 一方、兄の傑はピッチの王様、司令塔と評されてはいるが、全力でパスを出せる相手がいないことを悩んでおり、駆にパスを受けてほしいと考えていた。

 ある朝の登校中、傑はペナルティエリアの中でパスを受けゴールマウスをこじ開ける、勇猛果敢なエリアの騎士が日本に必要だと駆に訴える。そんな話をしている中。傑と駆は交通事故に巻き込まれてしまう。

 傑の心臓を移植することで駆は奇跡的に目が覚める。その事実を知らされた駆は葛藤に苛まれるも、傑の日記を読みサッカーを続けることを決意する。

 目指すはワールドカップ!兄の思いも背負った駆がひたむきに頂点を目指す!

 仲間たちと繰り広げる王道サッカーマンガ!

 

 

 

〈見どころ〉

 

 見どころ① これぞ王道!!

  あらすじを読めばわかると思うが、本当に王道の要素を詰め込んだマンガとなっている。

 王道だからありきたりの展開で面白くないのではと思うかもしれないが、そんなことは全くない。王道だからこそ、構成がすっきりしていて非常に読みやすい。

 ライトノベルの中には設定が凝りすぎて世界観に入り込めなかったり、ごちゃごちゃしな構成・内容になってしまうことがある。読んでいて疲れる、なんて感じたことがあるひともおそらくいるだろう。もちろん、設定が凝っているなりの面白さもあるが、ここでは王道ならではの面白さを紹介していきたい。

 まず、登場キャラの感情や苦悩に注目しやすい。特別な設定がないため、あまり考えることなく、シンプルに読み進めることができる。さらに、超能力バトルと違って普段なじみがあるスポーツなので、内容自体もすごくわかりやすい。

 いわば誰にでも読みやすい漫画なのだ。

 このマンガの見どころはそれだけか? いやそんなはずはない。

 見どころ②からさらに詳しく見ていこうと思う。

 

 

 

 

 見どころ② 構成力の高さ

 王道スポーツマンガの鬼門と言ったら何と言っても構成の難しさだろう。

 バトルマンガや日常マンガと違って、メインの学校、ライバル校、大会で当たる学校それぞれに注目選手を置かなくてはならない。1チームの人数が多いスポーツだと、登場しすぎて書き分けが付かなくなったり、個性が消えたりもする。さらに登場キャラや試合中に披露するテクニックなどは事前に伏線として張る場合もある。

 そういうことでスポーツマンガは辻褄が合い、なおかつ面白くなるような構成・演出を考えなければいけないのである。

 『エリアの騎士』では、「魅せる」構成と演出が飛び切りうまい。

 メインキャラの性格を生かした試合展開、伏線の張り方、スピード感と緊迫感ある試合を表現する演出、さらにはサッカーに詳しくない人にもわかりやすい試合解説。

 そういうことも含めて、読みやすい漫画であるし、魅了する技術もある。

 と、まぁ構成の素晴らしさを書き連ねてきたわけではあるが、それも当然である。

 私も後から知ったのだが、原作者の伊賀大晃さんは『金田一少年の事件簿』、『シバトラ』、『神の雫』など有名マンガの原作者なのである。それは当然面白いわけである。

 

 ちなみに、すごくマガジンらしいタッチの絵を描く作画の月山可也さんであるが、だれかのアシスタントやってたのかなと思って調べてみた。そうしたらなんと『涼風』『風夏君のいる町』の瀬尾公治さんが師匠とのこと。うん、納得という感じでした。

 

 

 

〈総評〉

 原作はもちろんのこと、作画も安定しているので読みやすさもあるマンガ。

 内容が特段難しいわけではないので、サッカー経験があまりない人でもスイスイ読めるようなマンガになっている。

 スポーツマンガを初めて読む、癖が強い画風は嫌だ。そんな人にお勧めしたいマンガ。

 

 

 

〈書籍〉

 原作:伊賀大晃 作画:月山可也 『エリアの騎士』 講談社