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【あらすじ・見どころ】『TIEMPO』/ 飯野大祐

 平凡なサッカー部に現れたのは一人の天才。

 

〈あらすじ〉

 中学からサッカーを始めた瀬戸柚樹は優しい同級生・先輩に囲まれながら楽しくサッカーをしていた。

 中三の先輩が引退したある日、そこに県内トップレベルのクラブに所属していた朝美圭右がやってきたことで、サッカー部が大きく変わってしまう。ピッチに響くは朝美の怒鳴り声。実力のある朝美の自己中心的な練習が続いていた。

 メンタルがこの上なく弱い柚樹はサッカー部を辞めようとするが結局は辞めさせてもらえなかった。朝美に怒られる幻覚まで見えるほど重症だった柚木は、怒られない方法を模索していた。

 そこで辿り着いたのが「朝美圭右の研究」だった。いつも出す指示や撮影した動画から朝美を徹底的に分析することで、最適なパスを出し、怒られないようにひたすら努力をしていた。その後、朝美はきょうごうこうからのスカウトを受け、もう柚樹とは関わることはない。そう思えた。

 

 「楽しいサッカーをする」。柚木はそれを目標にサッカー部を念入りに視察した上で志望校を決めていた。怖い先輩がいない、なおかつ新鮮でワクワクできるサッカーを求め、サッカー部創立三年目・県立春日高校に進学する。しかしそこで待ち受けていたのは強豪校へ進学したはずの朝美だった。

 

 理詰めで計算しつくしたサッカーを求める部長、気合とパワーで押しかつプレーをする副部長、そして傲慢な天才・朝美。

 混沌とした部活の渦中に柚樹は巻き込まれていく。果たして春日高校サッカー部は全校大会に進むことができるのか?

 臆病者の柚樹とキャラの濃い部員たちが繰り広げる青春スポーツマンガ。

 

 

 

 

〈見どころ〉

 

見どころ  戦略の鍵

 常に流動的に状況が動き、攻守や優劣も一瞬で移り変わる球技。それがサッカーである。

 そのため、得点に直結するFWという役割の責任は重大である。決定力や得点につながる展開に持っていく必要がある。それと同じくらいにパス、とりわけ

そのFWにいかにチャンスとなるパスを出せるかが戦況を大きく左右する。

 

 柚樹は怒られたくないがためにひたすらに研究をし、朝美が起こるときのパスの出し手の位置、走るコース、表情、得意なボールまですべてをデータ化していた。

 そのデータを用いて最適なパスを朝美に出すという、ロジカルサッカーをする。相手の戦略とどちらが上に行くのか、策と策の応酬がこの作品の見どころである。

 

 

 

〈総評〉

 全体的に見てもまだ足りないなという印象を受けました。

 コマ数が多くて単調、スピード感が感じられないコマ割りになってしまっています。せっかくの見せ所のシーンもコマ割りとトリミングの問題で迫力が感じられないのが非常に残念だなぁと思いました。また、デジタル絵を採用しているため無機質感が強く、線の強弱が描かれにくいので画力自体は高いとは言えないと感じました。

 ただ、これが連載初作品ということを考えると期待は大。物語の作り方や設定自体は差別化もできていて面白く、画力もこれから上がっていくと思います。

 熱血でもない、サッカーセンスがずば抜けているわけでもない、臆病者だからこそのサッカー劇。ぜひご一読を。

 

 

 

〈書籍〉

 飯野大祐 『TIEMPO』 集英社

 

 

TIEMPO―ティエンポ― 1 (ヤングジャンプコミックス)

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