【あらすじ・見どころ】『リクドウ』 松原利光
強くならなきゃいけない理由があるんだ
〈あらすじ〉 強さを求める男の躍進劇
借金取り・所沢はとある男からの借金を取り立てにやってきた。だが扉を開けるとその男は自殺しており、そこには自殺した父親を殴る少年・芥生リク(あざみ りく)がいた。所沢はふとした思い付きから、リクにボクシングのフォームを教える。
その後、リクは母親の下に引き取られるも、母親は別の男の下でクスリに犯されていた。母親を助けるため、リクは所沢に教えてもらったフォームも利用して男を殺害する。
リクは児童養護施設に送られ、先生という優しい存在と出会う。しかしここでも、仲間を殺された報復としてリクは襲われてします。また、一緒にいたという理由で先生も巻き込まれてしまう。
その時、リク達を助けたのは所沢だった。リクは自分には持っていない力を持つ所沢に惹かれていた。
立て続けに人と場所を奪われたリクが欲したのは、強い「拳」。それがボクシングを始めたきっかけだった。
〈見どころ〉
見どころ① 切り取りの奇才
特に見て欲しい部分は切り取り技術の高さだと思います。
下から上から、細部から俯瞰、リク視点から無機物視点とコロコロ視点が変わるのが特徴的です。
ここを使うかという構図もあって、読んでいて新鮮だなと感じました。一般的なマンガより移り変わりが激しいので読んでいて楽しい作品です。
見どころ② 「黒い」登場人物たち
このマンガの登場人物はキラキラした青春というより、人のゲスな部分だったり悪い部分が少し拡大して描かれています。
それが「人」としてではなく「獣」のような、本能で戦うという姿にもマッチしていて、より一層ダークな世界観に引き込ませます。
〈総評〉 やっぱり画力の高さ
個人的評価 72点
テンポがいいといえばそれまでなんですが、序盤の展開が早すぎるなと感じました。父親の自殺、母親の中毒、養護施設での事件とがポンポンと起こるため、リクがボクシングを始める動機が薄れてしまう感じました。
同じ理由からヒロインがリクに思いを寄せる理由も描かれていなかったので、う~んという感じでした。
ライバルの登場までも少し強引な感じが強かったですね。
まぁ、設定上しかたのないことなのかなぁ。
ただその初期の設定を抜いてしまえば、内容は面白い!
ストーリーの展開、そこで現れる少し不気味なライバルたち。絵のタッチがそれを際立たせるので、読み進めるうちに引き込まれます。
さきほど書いていない最大の見どころ。それは勢いのある画力でしょう。
マンガなのにスピード感が伝わる。一秒一秒動いているのがわかる。それに切り取りを含めた演出が上手い。
スピード感命というボクシングにおいてここは本当の強みに感じました。
これは後半になればなるほど面白いマンガという予感がしました。画力がこれからも上がるとなれば尚更です。
そうしたプラス要素が大きいことと、これからの期待を込めて72点とつけさせていただきました。
みなさんもぜひ読んではいかかでしょうか?
〈書籍〉