【あらすじ・見どころ】『アルスラーン戦記』/ 原作・田中芳樹 作画・荒川弘
目指すは祖国奪還! 一国の運命は14歳の少年に託された
〈あらすじ〉
大陸公路を中心として栄華を極めた国家、パルス王国。
その王子であるアルスラーンは14歳で初陣を飾る。無敗を誇っていたパルス王国軍隊だが、突如発生した深い霧や万騎長の裏切りにより、格下と捉えていたルシタニアに大敗を喫する。そしてルシタニア軍に王都・エクバターナを制圧されてしまう。
一方、九死に一生を得たアルスラーン王子は最強の武将・ダリューンと、参謀にして知略家・ナルサスを仲間にし、祖国・パルス王国を取り戻す決意をする。
架空の国を舞台に繰り広げられる戦乱バトルストーリー
〈見どころ〉
見どころ① 綿密に練られたストーリー
国家間の戦争がテーマになっているだけあって、人間関係が複雑に組み込まれている。しかし、その分ストーリーの濃さ・重さが一層際立つ作品である。国家の思惑、上層部の対立、裏切り……。それらが絡み合って物語は深いところまで進んでいく。
加えて伏線の張り方が上手い。どんでん返しがあちこちに散らばっているので、二度見返す面白さもある。
見どころ② 祖国を取り戻す逆転劇
この作品の一番の見どころはこの逆転劇だろう。
味方はわずか数人。そんな中で祖国を取り戻さなくてはならない。
常に襲い掛かる追手を撃退しつつ、協力してくれる仲間を探していく。困難だらけの旅の中、アルスラーンが肉体的にも精神的にも成長していく姿はなかなかに良い。
中でも、千人の兵をわずか6人で撃退しなくてはならない、という場面は読んでいて一番ドキドキした。絶対やられるだろうなんて場面で会っても、策を講じ、逆転の一手を探す。先の読めない展開と躍動感あふれるバトルシーンには驚かされた。
どのような形で乗り切るのかはぜひコミックスで。
見どころ③ 対立する倫理観
奴隷制度を存続させてきたパルス王国に対して、人類の平等を謳うルシタニア王国。奴隷制に慣れ親しんでいるアルスラーンはそんな二国の倫理観・宗教間の間で葛藤する。
一方、ルシタニアの宗教も単なる平等ではなく、他宗教を一切合切排除するという過激派もおり、また完全に奴隷制を廃止しているわけではない。
果たして物語が進むにつれアルスラーンはどのような道に進むのか、これも見どころである。
見どころ④ 荒川先生の再構築力
この作品はもともと田中芳樹さんの小説が原作である。
それを荒川先生の手でコミカライズしたのが、この『アルスラーン戦記』である。
そのため、原作とは異なる点は少なからずある。しかし、『鋼の錬金術師』や『銀の匙』でおなじみの荒川先生である。言わずもがなではあるが再構築力が高い。
そしてバトルシーンも変わらず、激アツである。
〈総評〉
原作のストーリーとして面白い要素が詰まっているうえに、荒川先生の手によってそれが構成・画力となってさらに面白くなっている。
おおむねバトル要素が強いが、戦略的なバトルと肉弾戦が巧妙に織り交ぜられているので単調にならず飽きることはない。
いつ負けてもおかしくないというドキドキ感も味わえる、作品として非常に面白い。ぜひご一読を
〈書籍〉