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【あらすじ・見どころ】『雨の日も、晴れ男』/水野敬也

〈あらすじ〉

 

  あるところの小さな神・シュナはいたずらごころから、他人の運命を変えることができる「運命の手帳」を盗む。もうひとりの小さな神・ワンダーは「運命の手帳」が危ないものとわかってはいたが、「弱虫ワンダー」を脱却するため、人の運命を操作することを画策する。

 人を不幸にして遊ぶということで二人が目を付けたのは、どこにでもあるような家庭を持ち、平凡を絵にかいたような男・アレックスだった。

 ワンダーとシュナはお互いに意地をはり合ったため、次第に内容がエスカレートしていく。次々と不幸に襲われるアレックスであったが、ワンダーとシュナがこれまでみてきた男とは少し違っていた。

 不幸に打ち勝とうとするアレックス、それを見守るワンダーとシュナ。最悪な一日はどのような形で終わるのか……? ポジティブな男を描いたコメディ要素たっぷりの心温まるストーリー。

 

 

 

 

〈見どころ〉

 見どころ①

 著者の他作品でベストセラーを達成した『夢をかなえるゾウ』とも少しに通ったところはあるが、この作者はポジティブな生き方とか、人間社会でうまく生きていくメソッドをわかっていると感じた。

 だからこの作品はまず、今辛い人生を送っている人に読んでもらいたい。

 本当につらいのなら本を読んだところで全てが解決するとは思わないし、それだけで全てが救われるとも思わない。ただ、何かに縋る宛てが必要なはずだ。

 このアレックスという男の人生観は、つらい人にとっては気を紛らわすだけの手段にしかなれないかもしれない。それでも、解決の一途とも成り得るかもしれない。いや気を紛らわすことでもいい。どこか、ほんの数パーセントだけでも心の支えになる。ポジティブさに救われる部分があると思う。

 だからこそ、今辛い人生を送っている人にこの小説を読んでほしい。

 

 

  見どころ②

 先ほどは辛い人生を送っている人に読んでほしいとは書いたが、個人的に読んでほしい層を挙げただけで、そういう掛け値抜きで楽しめる小説だ。

 アレックスは平凡な人物には違いないが、型破りでぶっとんだ、ダイナミックという六字が似合いすぎる男だ。個性が溢れすぎていて、「いやありえないだろ」と何度も突っ込みたくなる。

 伝わるかはわからないが洋画に登場する過激すぎるジョークに近いものを感じる。

 独特のテンポとノリは読んでいくとだんだんとクセになる。

 ただ、そんなおちゃらけたアレックスではあるが、スパッと竹を割ったような性格は正直かっこいい。

 

 そんなわけで、普通にコメディ要素の強い作品なので気楽に楽しんで読むことができると感じた。

 

 

〈総評〉

 

 端的に述べれば、元気になる一冊。

 私は、馬鹿みたいに元気でふざけている人を見ると勝手に元気になると思う。それと同じで、ポジティブで強く生きている人物を見ると、それだけで元気をもらえる。

 面白さの中に、ぽかぽかと心が温まる要素が組み込まれた一冊。

 みなさんもぜひ読んでみてください。

 

 

〈書籍〉

 

水野敬也 (2008)『雨の日も、晴れ男』文芸春秋

(2005年に刊行された『BUD LACK 』を再編集・改題した作品です)

 

 

 

雨の日も、晴れ男

雨の日も、晴れ男