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知らなきゃいけない年金の話 Part5

 

 「現在の年金制度の最大の問題点、賦課方式はなぜ生まれたのか?」

 

 

 

こんにちは、ミヤムラです。

 今回は年金制度の問題点、賦課方式の歴史と今でも続いている原因を見ていきたいと思います。

 

 前回の記事はこちらから

 

 

 

honnosusume.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

5 賦課方式はなぜ使われ始めたのか

 

1 賦課方式はインフレに強い

 

 賦課方式が選択されている理由としてインフレに強いという点があげられます。

 

 賦課方式は「現在の老齢世代の年金は、現在の現役世代が補う」というものです。そのため、その当時の物価水準をもとに年金が支給されます

 

 

 例えば、リンゴ1個=100円 の時代に将来受け取る1年分の年金として10万円預けたとします。このとき、リンゴ1000個分の価値があります。

 しかし、年金を受け取るまでにインフレが発生してリンゴ1個=1000円になったとします。このとき、リンゴ1000個分の価値があった10万円が、リンゴ100個分の価値に変わりました。

 実質的に価値が十分の一になったといえます。

 賦課方式はこうした価値の変動に対応することができます

 

 

 物価水準が安定化したのはここ数十年のことです。戦争や戦後、高度経済成長などが発生すると物価が大きく変わるため、年金制度成立時には有効だったいえます。

 

 

 

2 所得再分配制度を持っている

 

 私的扶養と比べて賦課方式の社会的扶養は所得再分配的要素をもっています。

 しかし、年金という間接的な形で所得再分配を行わなくてもよいという意見もあります。なぜなら、累進課税性や、高所得者が持つ土地に対しての固定資産税(相続税)がかけられているからです。

 確かに所得再分配機能は大事ですが、わざわざ年金制度を通して再分配をする必要があるのかは疑問でもあります。

 また、高齢者の中はもちろん低所得者がいるはずですが、多くの資産をもつ高所得者もいるはずなので、そういった再分配する必要のない人にまで恩恵を与えてしまうという問題点もあります。年金制度による再分配は、低所得者だけではなく高所得者にも再分配をしてしまう恐れがあります。

 

 

 

 

 

 

3 国はどのように考えているのか

 

 現在の制度について国はどのように考えているのでしょうか?

 政府は世代間不公平は本当に不公平なのかと投げかけています。

 その理由として、現在以前の年金受給者は戦後という物資が少ない中で日本を支えていたという主張からです。その苦しい時代を生き抜いてきた世代を支えることも必要ということは一応頷けるでしょう。

 

 しかし、年金に関する第一人者・鈴木亘さんの計算によると、「払い損」の額は一人当たり数千万にもされています。

 皆さんは今の高齢者が苦しい時代を生きてきたという理由で、悠々と数千万円を渡せるでしょうか?

 

 国の主張もわかりますが、それだけでは納得できる理由としては不十分ではないでしょうか?

 

 

4 まとめ

 

 政府は戦後の日本を考えて、都合のいいように賦課方式を選択してきましたが少子高齢化の時代には似つかわしいものだと考えられます。

 

 日本は今後どのような対策をしていくべきか、それは次回のPart6で解説していきたいと思います。

 

 

 

※ この記事の作成にあたり出来る限り多くの文献・サイトを参考にしたうえで執筆いたしました。十分に注意しているつもりですが、間違った内容であったり、簡略化するために誤解を生むような表現をしている可能性があります。

 疑問点や修正すべき点がございましたら、コメントにて質問・ご指摘お願いいたします。

 

 

(参考サイト・文献)

 

厚生労働省 「年金・日本年金機構関係」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/index.html

最終アクセス 2019年6月8日

 

 

鈴木亘 (2009年) 「騙されないための年金・医療・介護入門-社会保障改革の正しい見解・考え方」 東洋経済新報

唐鎌直義・小澤薫・久昌以明・宮本悟 「どうする!あなたの社会保障 ③年金」 株式会社旬報社

芝田英昭 「基礎から学ぶ社会保障」 自治体研究所

上村敏之 (2009年)「公的年金と財源の経済学」 日本経済新聞出版社