【あらすじ・見どころ】『永い言い訳』/西川美和
〈作品について〉
2016年には自信により映画化、第71回毎日映画コンクール・監督賞受賞
2016年本屋大賞第4位の作品。
〈あらすじ〉
作家の衣笠幸夫は不倫行為の最中に、妻の夏子が事故死したことを告げられる。すでに冷め切ってはいたため、とりわけ深い悲しみがあるわけではなく、むしろ普段通りの生活を続けようとしていた。
しかし、夏子の友人の夫:陽一から電話がかかってくる。陽一は幸夫と同じ境遇で妻を失くしていたため、一方的に親近感を抱いていた。幸夫は、仕事と子育てを両立できない陽一を不憫に思ってか、子供たちの世話を買って出る。
人との付き合いが得意ではなかった幸夫であったが次第に心を開きだす。そして陽一から聞く夏子の様子から、亡くなった彼女への思いが強まっていく。
本来であれば関わることのなかった人物たちが、夏子の死をきっかけに動き出す。
変わり者であったはずの衣笠幸夫の心情の変化を描いた、ちょっぴりハートフルな物語。
〈見どころ〉
この本を読み終えたとき、晴れやかな小春日和の中に立っているような清々しい気分で、その清々しさゆえに悲しくなる、という風景が頭に浮かんだ。
この物語はハッピーエンドを迎えるわけではない。バッドエンドの中で、いかに苦しみが少ない選択肢を選ぶかという、極めて苦しいものだと感じる。でもその中で、幸夫が忘れていた家族の愛だったり、自分の知らない夏子と出会うことで、考え方が大きく変化する、というのが見どころだと感じた。
見どころ①
タイトルでは「長い」ではなく、「永い」という字があてられている。
通常、時間の長さを表すとき、限りある時間を示すため「長い」という漢字が使われている。
一方ここでは、永続的という込めて「永い」という漢字が使われている。
そして、これは主人公:衣笠幸夫の「言い訳」というのが生涯続くという意味である。
タイトルと本文に関連があるのは王道中の王道であるが、タイトルを考えながら読み進めると一層よい作品になるなと感じた。
〈書籍〉