【あらすじ・見どころ】『天空侵犯』/ 三浦追儺・大羽隆廣
〈あらすじ〉
本城遊理は普通の女子高生。学校にいたはずの彼女は、気が付けば「仮面」の男が人を殺す現場に居合わせていた。訳が分からないままも逃走するが、そこは地上に降りることができない高層ビルだけの世界だった。
人間を殺そうと次々と現れる仮面。突然辿り着いた謎の世界。
目指すはひときわ大きい、とある塔。
突然訪れた世界からの脱出を目指す中、摩天楼で繰り広げられる戦闘、様々な駆け引き、ドキドキとワクワクが詰め込まれたサスペンス・サバイバル漫画。
〈見どころ〉
見どころ① 摩天楼で起こる命を懸けたサバイバル
みなさんが今までで訪れた一番高い場所はどこだろうか?
観覧車、スカイツリー、飛行機など様々だと思うが、そこで生活をしたことはあるだろうか?高いところが好きというひとはおそらく少数だろう。
しかしこの世界では足がすくむような超高層ビルの上で殺人仮面と命を懸けたサバイバルをしなくてならない。死の恐怖と常に隣り合わせということに加え、いつどこで現れるかわからない「仮面」、敵か味方かわからない人間が現れるなど、リアルなスリルが味わえる。
さらにサバイバルであれば、一見強そうな味方でもあっけなく死んでしまうことだってある。場合によっては主人公格が死んでしまうことだってある。そういった要因もドキドキを助長させている。おかげで私は読んでいる最中は心臓のバクバクが止まらなかった。
見どころ② 謎に包まれた世界観
生きていくうえで必要なものは何だ?という質問に対して、「情報」というのは正解のうちの一つだと思う。世界の物理法則だって、食糧だって「情報」さえあればどうにかなることだってある。
しかし、この世界の下では圧倒的に情報が欠如している段階からスタートする。
異世界なのか未来なのか、どういう基準で集められたのか、「仮面」とは一体何なのか。何もわからないところから始めるため、序盤の運だけで生きている部分が、もう手に汗握らずにはいられない。
また、そういった観点から謎解きとしてもかなり楽しめる。
原作・作画に分かれているといっても、かなり細かく伏線が張られている。しかも張り方が秀逸すぎて、読んでいる間の考察とワクワクが止まらない。
この世界観はとても特異なもの。「神」「天使」「高層ビルが並ぶ街」「飛び降り自殺を望む仮面」。そういった謎が少しずつ明らかになるのもまた面白い。
見どころ③ 多彩な武器と機敏なアクションシーン
現実世界をモデルにしているためか、「仮面」たちは多種多様な武器を装備している。ドリル、包含、スコップ……。武器だけではなく、服装も千差万別。プロ野球選手、スーパーの店員、お坊さん……と武器と業種のオンパレード。
敵の形態が各々で全く異なるので、対峙する相手によって戦法が全く異なる。熱血脳筋というより、きちんと考えて戦うという面白さもある。それゆえ、戦いは手に汗握る、熱い戦いになっている。
もちろんそういったストーリー・構成的にも面白いのだが、それ以上に画力が高い。
日常的なリアルな画風であるが、バトル時にはスピード感あふれるバトル漫画感が強くなる。引き込まれるようなバトルを演出できるのも、この漫画の強みであろう。
〈総評〉
素人目で見ても構成がしっかり練られており、じれったい、早く続きを読みたいと思わせる手腕が恐ろしいほど秀逸である。
絵柄も講談社らしさを踏襲しており、かなり読みやすいものとなっている。メリハリのある、それでいてバトルの演出がうまい、個人的には文句の付け所がない作品である。
グロテスクな表現は多いかと思うが、絵柄や読みやすさという観点で見ると人を選ぶことが少ない漫画である。
興味を持った方はぜひ、読んでみてください!
〈書籍〉
『天空侵犯』 原作:三浦追儺 作画: 大羽隆廣