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【あらすじ・感想】『ライ麦畑でつかまえて』 J・D・サリンジャー

〈あらすじ〉

 17歳の少年ホールデン・コールフィールドは成績不良を理由に退学処分を受けてしまう。悲観的かつ衝動的な彼は追い出される前に学校を飛び出す。その間、学校や向かった先のニューヨークで、家族や友人、見知らぬ人と出会いそして別れるという物語。

 

〈見どころ〉

 

見どころ①

 この作品は素行不良の少年ならではの青春が事細かに描かれている点だろう。

 家族に縛られるとか恋愛が絡むというところは何とも青春らしい。その年でしか味わえない苦労もまた青春なのではないか。さらにこの小説は、そういった情景を一人称で鮮明に描いているため、その心情の変化がよく伝わる。

 一方で、思春期ならでは大人になろうともなれない苦しみやら葛藤が描かれている点も面白い。ちょっと背伸びするが、少しだけ届かない。もちろん私にもそういう経験があるが、身近に感じてどこか懐かしい。

 

 

見どころ②

 ホールデン・コールフィールドという少年は興味深い。

 出来事も人物も、そう何事も批判的に描きたがる。それなのに、なんだかんだ人と関わりたがる。

 初めて会った人や興味がない事柄はもちろんのこと、クラスメートやルームメイト、昔からの友人までも批判的述べて解釈する。そんな彼は友達が少ないのかとかそんな風にも思える。しかし彼は出会いたがりで、誰かに出会おうとできる限りの人脈を使って、多種多様な人物と出会い、そして別れ続ける。これが立った数日のうちに起こるんだから、また面白い。

 

見どころ③

 あるいは、アメリカの少年の日記と捉えるのが一番なのかもしれない。

 これが一般的なのかはわからないし、この作品も前世代の作品ではあるからなんとも言えないが、こういう生活をしていた少年がいると考えて読んでみると面白いかもしれない。

 少なくとも私が17歳の時には退学処分を受けて学校を飛び出すなんてなかったし、日本でもそういう経験やそういう学校があるという所は少ないと思う。先ほどは「思春期ならでは」なんて言葉を使ったけれども、私が17の時と比べればずいぶんとアクティブでアダルトな青年である。

 言ってしまえば、ホールデンのような経験をしたことがあるなんて人物のほうが圧倒的少数だろう。そんな刺激的な日常を憂鬱的な主人公とともに歩むというのもなかなか面白いのではないだろうか。

 

 

〈気になった点〉

 ただ、出来るだけ忠実に再現しようとはしているのだろうが、翻訳には直訳意訳がつきまとう。日本語訳されたものでも十二分に楽しめるだろうが、ところどころ原作が気になるなという訳だったり、言葉の重みがわからなくなる箇所があるのは事実だ。仕方がないことだし、どうしようもない問題ではあるが、面白いなと思った方や興味がある方は原作も読んでみるのもよいのではないだろうか。

 溜まっている書籍たちを読み終えたら、原作にも挑戦しようと思うので、その際にはン本語訳との比較をぜひともしたいと考えている。

 

 とはいっても見どころ①~③であげたように、なかなかに面白い要素が詰まっているし人の日記を覗いた気分でスラスラと読むことができた。

 皆さんもぜひ、読んでみてはいかがだろうか。

 

 

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

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The Catcher in the Rye

The Catcher in the Rye

 

 

 

〈書籍〉

 D・J・サリンジャー / 訳者 野崎孝(2003) 『ライ麦畑でつかまえて』 白水社